「どう、気に入った?」
「ええ、とっても素敵で夢の中みたい」

ただここにいるだけで日常を忘れてしまう、そんな空間だ。
こんな場所でゆっくりと時間を過ごすことができたらどんなに幸せだろう。
心からそう思えた。

「ここの敷地は広大だがホテルとしての規模はそんなに大きくはなくて、客室も三十室ほど。そのすべてが自然に囲まれた離れになっているから、周囲の目を気にすることなくのんびり過ごせる」
「大人の隠れ家ですね」
「そう。まさにこのホテルのコンセプトはそこ。都会で忙しく働く大人のやすらぎの空間だ」

なるほど。
確かにここなら思う存分リフレッシュができそう。

「でも、ここの魅力は客室だけじゃない。望愛を連れて来たかったのはここだ」
そう言って創介さんが足を止めた。

目の前にあるのは木製の扉。
大きな引き戸の扉は両開きでその存在感も半端じゃない。
一体何が始まるのだろうとドキドキする私を見ながらうれしそうに笑った創介さんは、近くにいたスタッフに何か目配せをする。

スーッと、静かに開いた扉。
その瞬間私の目に飛び込んできた色彩。

「う、嘘・・・」
息をのむほどの衝撃に、私は立ち尽くした。