「平石会長、お久しぶりです」
「ああ、創介君。今日はお招きありがとう。そして、オープンおめでとう」
「ありがとうございます」

一条コンツェルンと肩を並べる大財閥平石コンツェルンの平石会長のもとに歩み寄り親し気に挨拶を交わす創介さんに、当然周囲からは多くのフラッシュがたかれる。
この場に私がいていいのかしらと不安になったものの今更逃げだすこともできず、私は創介さんの隣に立っていた。

「坂本さんも、すっかり元気そうだね」
「はい、その節は大変お世話になりました」
「いえいえ、うちのホテルで起きたことだったから私としても大変申し訳なく思っているよ」
「とんでもありません、私が勝手にしたことですので」
返ってご迷惑をおかけしましたと、頭を下げた。

「一条副社長、お連れの女性をご紹介いただけませんか?」

それは無粋な記者からの質問。
話題の芸能人や著名人のいるパーティーでは時々こんな風に声をかけてくる人がいる。
創介さんも経済界の若きプリンスなんて言われてかなり顔が知れているし、綾香さんとの騒動でもわかるように一条コンツェルンのお妃選びに世間も注目もしている。
そんな所に女性と腕を組んで現れれば、注目されて当然かもしれない。
もちろん返答が聞けることは期待できないけれど、記者としては聞かないわけにはいかないのだろう。

「彼女は、僕のパートナーです」

えええ。
その瞬間、私は創介さんを見上げた。