「平石コンツェルンの会長もみえたようだから、もう一度挨拶に回るか」
「そうですね、他の来賓の方もお揃いですし」

今日の創介さんは一条プリンスホテルの副社長としてホスト役に徹する。
そのため来賓への挨拶にも追われている。

「望愛、平石会長に会うのはこの間足のケガをした時以来だろ?」
「そうですね。あの時はお世話になりましたし、その後も何度かお見舞いの連絡をいただきましたから、ぜひご挨拶したいです」
「じゃあ、一緒に行くか?」
「ええ」

返事をして歩き出そうとした私の前に差し出された創介さんの左腕。

え?
一瞬ポカンとしてから、腕を組めってことだと理解した。

「いいんですか?」
「ああ」

華やかな席に不慣れな分、パーティーでの決まり事にはとても疎い。
男性にエスコートされたこともないからどうしていいのかもわからないけれど、創介さんが言うのだから間違いないだろうと私は腕を組んだ。
当然すれ違う人たちの視線を集めるし、恥ずかしくて仕方がないけれど、創介さんを信じてただ前を見つめていた。