「心羽意外とこういうの好きって言ってたから」


確かにそんなようなことを言った気がする。


覚えててくれたんだ…って今はそうじゃない。


私は恵美達の会話に神経を集中させた。



「ねぇ、心羽。聞いてる?」



ごめん、聞いてない。


そこまで考えたところで彼女らが立ち上がった。


一直線に私のところに向かってくる。


やだ。怖い。



「今日の放課後、北校舎裏に来て」



「待って。心羽に何するつもり?」



茉莉花が駆け寄って来てそんなことを言った。



「別に、ちょっとしたお喋りですぅ」



ルカくんはキョトンとしている。


逆に出しゃばってくるよりもいい。ずっとそうしていてくれ。



「お喋りならここですればいいじゃない」



「乙女の会話だから」



「茉莉花、もう大丈夫」



「でもっ……分かった」



察してくれてありがとう。


はっきり言って怖かった。


多分、私の上履きを隠したのは恵美達だ。


負けたくなかった。


好きの勝負とかじゃない。


ただ単純に、いつも茉莉花に守られている私から抜け出したかった。本当にそれだけ。



「分かった。放課後でいい?」



勝った。恵美がそんな顔をした気がした。



「うん、待ってる」