ホッと胸を撫で下ろした。


私も前を向いて歩く。歩幅を茉莉花に合わせる。ふと、彼女を覗き込んだ。



「な〜に?」



「ううん、何でもない」



「変な心羽」



急に吸血されて一生添い遂げろとか言われて非日常的なこと続きだった。だから、茉莉花と喋ってる時間が至福の時だ。


茉莉花と喋りながら歩けば、学校までなんて一瞬だ。それがすごく悲しい。


学校の校門が見えてきた。


茉莉花と同時に校門を跨ぐ。


学校に着いてしまった…。でもクラスが同じだから別にどうってことはないのだが。


靴箱で靴を履き替えようとしたとき、自分の上履きがないことに気が付いた。


あれ、持ち帰ってないと思うんだけど…。私の異変に気付いたのか、茉莉花が「どしたの?」と聞いてきた。



「上履きがないの」



「エッ!」



どこを探してもない。一瞬、嫌なことが頭をよぎる。


いじめ?


ううん、違う、そんなことない…はず。


気まずい沈黙が流れる。先にそれを破ったのは茉莉花だった。



「先生のとこ行こ?」



「そう、だね」



「ちなみに、茉莉花は上履きある?」



「うん、あるよ。心配してくれてありがとう」



私達は職員室までの廊下を歩いた。靴下で歩く廊下はひんやりとしていた。