夜には真っ暗になるこの土手も、昼間なら怖くない。犬の散歩やジョギングをしている人とすれ違いながら、私はゆるゆると歩く。
 もう学校も終わっちゃうんだな、なんてセンチメンタルな気分になっていた時だった。

「――だって、言ってるだろ!」

 緊迫感のある声に、私は声のする方を見る。ケンカかな、だったら怖いなと思ったけど、予想に反して声の主は一人だった。

「……河村(かわむら)じゃん」

 河原のグラウンドで、一人。何やら声を挙げていたのは、クラスメートの河村辰也(かわむらたつや)だった。
 目の前にスマホを(かか)げて、先ほどから何かを叫んでいる。



「だから、俺はお前が好きだって、言ってるだろ!」