遅くなったし、送るわ。と言って、河村は私の(となり)を歩く。
 夕陽に照らされた土手に、私と河村の影が長く伸びている。

「あのさ」

 河村が声を挙げる。

「……俺、頑張るわ」
「うん」

 河村の声が耳にやさしく届く。さっきの、ユージーンみたいな声じゃない。いつもの河村なのに、なんでこんなにドキドキするんだろう。

「オーディション、落ちたらごめんな」
「そんなの関係ないよ!」

 私は思わず声を挙げた。

「私、河村のファン一号だもん」

 そう言うと、河村は「ありがとな」と言って嬉しそうに笑った。