そう言うと、河村は立ち上がった。階段を数段降りて、私と同じ目線になる。

「だから、俺はお前が! 好きだって言ってるだろ!」

 姿勢を正して、力強い目で河村は叫ぶ。

「……どうだった?」
「うーん」

 悪くない。というか、むしろかっこいい。でも、さっきのキャラクターの感じとあっているかと言われるると……。

「ちょっと激しすぎな気がする」
「激情家ってところを出してみたんだけど……」
「うん、まっすぐなキャラだったらいいと思うんだけど、今回のキャラは影があって真面目で、主人公のことを好きになっちゃいけないって思ってるんでしょ?」
「ああ」
「そしたら、もうちょっとこう……言っちゃいけないのに、我慢(がまん)できずに言っちゃった! みたいな、ためらいみたいなのがあるといいかなって」
「よし、やってみよう」

 河村の声が耳に届く。なんだか不思議な感じだ。
 こうしてクラスメートの声に真剣に向き合ったことがないからかもしれない。
 なんだか心の奥がむずむずして、そわそわした気分になる。

 河村は真剣だった。

 私の言うことに納得してくれて、それを自分の声で表現しようとしている。
 何度も何度も言い方を変えて、そのたびに声の印象がどんどん変わっていく。