「母さん達の海外赴任が決まった時に3人で話し合ったんだよ。話し合いって名の賭け話だったけどね。母さん達が海外にいる間にみあを落とせばふたりの結婚を許す。落とせなかったら一生兄と妹としての一線を越えないこと。それが耐えられないのであれば籍を抜けて『他人』になること。そうすればみあへのアピールは自由。ただし、みあを傷付けて泣かせでもしたらブッ殺すから覚悟しとけよってね」
「…最後の『ブッ殺す』って、」
『父さんの言葉よ。漣のことも勿論大切に想っているけれど、やっぱり父親にとって娘っていうのは特別な存在みたい』
ニコニコな母さん。
父さんは普段から寡黙(かもく)な人だし、あまり感情を面に出さないし、家にいても仕事ばかりで、子供の頃からあまり遊んでもらった記憶もないからわたしのことなんて…って思っていたのに。
父さん…。
「…ん?でも、漣、もう籍抜いたって言っていなかった?」
「ああ。母さん達と話し合いした後にすぐ抜いた」
「え、なんで?だって…」