漣を迎え入れてからたった1年後。

母さんが正真正銘の我が子を奇跡的に授かった。

「俺、よく覚えているんだけど、母さんの妊娠を告げられた時、お腹の子への殺意ハンパなかったんだよね」

『…それは、父さんも母さんも感じていたわ』

「母さんのお腹にいた子って、わたしだよね?」

「ああ。憎らしくて憎らしくて毎晩母さんと寝る時に寝相と見せかけて母さんのお腹ポコポコ蹴っていたよ」

「こわっ!!!」

『それも、わかっていたわ。漣の孤独も憎しみも全て受け入れたうえで漣とお腹の子を平等に愛し守っていくとふたりで神様に誓ったの」

けれど、母さんのお腹が大きくなるほどに、漣のお腹の子への憎しみも増していった。

「…怖かったんだよ。お腹の子が生まれたら自分は用無しになって捨てられるんじゃないかって。だから本当にお腹の子を殺してでも自分の居場所を守りたいと必死だったんだ」

「漣…」

漣は自分の立場が解る利口な子供だった。

それでも譲れない、譲りたくない居場所なんだって必死で…。

当時の漣の気持ちを思うとジワリと涙が滲んだ。