まず、父さんと母さんとの間になかなか子供が授からなくて、不妊治療にも踏み切ったが、体力的にも精神的にも辛くなって断念してしまったとのこと。

『子供は諦めよう』

夫婦でそう泣きながら話し合った矢先、養子に迎えてほしい子供がいるとの話が舞い込んできたこと。

それは父さんの学生時代に仲が良かった友人の遺児(いじ)。

父さんと母さんは『これは運命だ』と、快く遺児を我が子として迎えた。

それが、漣。

漣は当時まだ2歳だったのに、もう自分の立場を理解しているかのように父さんと母さんに迷惑がかからないよう、ただ大人しく子供らしくない子供だったと言う。

それでも両親にとっては漣はとても可愛く、溺愛していた。

これからもずっと3人で慎ましく暮らしていくはずだったのに。

それは突然だった。