「実家にあったのは全部母さんの物だから置いてきたんだ。ここで使う物は改めて買うことにしたの」

「そうなんだ?でも、お袋さん料理出来るの?俺、みあちゃんの手料理しか食ったことないよ?」

「…そうだったな。お前、みあの手料理を食ったことあるんだったな。今からでもお前の舌を引っこ抜いてやる」

「漣…。お前さっきから発言が全部犯罪の域だぞ?」

「賢太郎くん、気にしないで。お兄ちゃん家ではいつもこんな発言しかしないから。母さん、料理上手だよ。わたしの料理の先生は母さんだし」

「マジで?みあちゃん苦労してんね…。そうなんだ?なんか意外かも。お袋さん、仕事一筋で家事全般ダメなイメージだった」

「まぁね。それはわたしに家での役割を与えてくれたからなんだ。本当は母さん何でも出来ちゃう人なんだよ」

…あ。ピザ、最後の一切れ。誰が食べるんだろう。

すると兄が、何の遠慮もなしに最後のピザを取るとわたしの方を向き、とろけるような笑顔で、

「さぁ、みあこっちにおいで。兄ちゃんとこの家での初の共同作業、ポッキーゲームならぬピザゲームやろう。両端からふたりで食べていくんだよ」

心底嬉しそうに、ちょいちょいと手招きしてきた。