「これでいい?本に載ってたやつ」

大輝の手にあるのは、引き出しの標本箱に入っていた蝶2匹。

「ありがとう。蝶の羽をこうすると…」

光くんが蝶の羽を指で触ってから紙に触れると、触った場所が鉛筆の粉を撒いたみたいに汚れた。光くんは、その汚れた場所をセロテープで写し取って顕微鏡で見る。それを繰り返す。私には2匹の蝶の羽を触った後の汚れの違いは、目で見るだけではよくわからない。

「こっちだな…」

光くんが何度もプレパラートを見比べ、その中から一つを選んで言った。隼人が光くんに促されて顕微鏡を覗く。

「…鱗粉か」

「ああ、そうだ」

大輝と私も覗いてみる。黒っぽい粉のように見えるだけなのに、顕微鏡を使うと黄色や赤、黒、青の鮮やかな色や鱗のような形がよくわかる。