近すぎる距離と甘い香り。

「へえ、お嬢さま扱い、されたいんだ」

耳元で聞こえる隼人の声に、カーッと頬が熱くなる。恥ずかしさと焦りで声が大きくなった。

「冗談に決まってるでしょ!あんたは自分の好きな人だけ、お嬢さま扱いしてなさいよ!」

「お前に言われなくてもそうするって。だいたいお嬢さまは、お前みたいにこんなでかい声でしゃべらねーし」

隼人は笑いながら、私から離れた。

「だって見習いだもん。まだ完璧なお嬢さまじゃないもん」

「ぷはっ、ははは。お前のそういうとこ、ほんとに…」

「いつまで笑ってるのよ、もう先に行くから」

私は怒りを隠せず、理科室まで大股で歩いていった。隼人といると、毎日頑張って「お嬢さま」しているのを忘れてしまう。これじゃ、いつまでたっても本当のお嬢さまにはなれないよ。