「だって俺は何も変わってないし」

隼人は私を見て笑った。桜の花びらが舞っている。あの日の雪みたいに。

「きれいだね」

私は、空を見上げて言った。

「ああ、きれいだ」

隼人も空を見上げる。

「お前さ、アルファの奴らから婚約者を決めるんだろ?」

「隼人だって、お嬢さまと結婚するために、こっちに転校してきたんでしょ。ねえ、入学式のパーティーで誰に告白したの?どんなふうに告白したの」

「…言わない」

「言えよ」

「誰に」

「私に」

なんだかこれってクリスマスの時にした会話みたいだ。私が思い出して笑うと、隼人は真面目な顔して私に言った。

「好きだ」

サーっと風が吹いて、桜の花びらが舞った。風が作った小さな竜巻が、私の足元に広がる花びらを連れていく。

「…って言った」