「親に頼むのが嫌なら、友達に頼むとかさ」

今日は隼人がやけに絡んでくる。人に頼むのは気を使うから苦手だってこと、知ってるはずなのにイライラする。私は、歩く速度を速めた。

「無理。人に頼むより自分でなんとかするし。だから言わない」

「言えよ!」

「誰に!」

「俺に!」

語気を強めて隼人が言った。私は、急ブレーキをかけた車みたいに、つんのめって止まった。

「な、なんで隼人に言わなきゃなんないのよ。別に私は…」

「あー、もう!ほんとお前って」

私の話を遮って、隼人は自分のしていたマフラーを取ると、私の頭からバサっと被せた。ふわふわで柔らかくて、微かに隼人の匂いがする。マフラーで私の顔が隠れているから、隼人の表情は見えない。私の表情も隼人には見えない。自分でもどんな顔しているか分からない。見えなくて良かったかもしれない。走り去っていく隼人の足音が聞こえなくなるまで、私は顔にかかったマフラーを取ることができなかった。

「俺はお前のサンタになりたかっただけだ、バカ」

走り去る瞬間、微かに聞こえた隼人の声が今でも耳に残っている。