思わずゴクリと息を呑んだ。
…でも。
「…すみません。うちのメンバーも八代先輩のこと気に入ってるみたいなので、先輩が続けてくれる限りは他の所に彼女を譲る気はないです」
キッパリと、玲央さんに向かってそう言い放った自分自身に内心驚いていた。
純粋にSAISONを思ってくれていることが玲央さんと花木先輩の話から伝わってきて…素直に嬉しかったんだ…と思う。
そっか、有羽もきっと…こんな気持ちだったんだろうな。
【翔兎、瑛茉ちゃんなかなか面白い子だぞ。そろそろ素直になってもいいんじゃね?】
先ほどの有羽からのメッセージを思い出し、心の中で小さくフッと微笑んだ。
その時。
「…そっか。ま。とりあえず冗談はさておき、今日の仕事頑張ろうね?翔兎くん」
…!!
はじめて玲央さんから名前を呼ばれ、俺は思わず目を見張る。
玲央さんに名前を呼んでもらえた…!
そんな些細な変化が嬉しくて。
「はい。よろしくお願いします!花木先輩も、お疲れ様です。それじゃ俺はこれで失礼します」
最後に二人にペコリと頭を下げ、挨拶を終えると、俺は元いた場所に足を進め、空いてる椅子に腰を下ろした。
その後、中々気持ちが高ぶるのを抑えられず、役の気持ちを作るのに時間がかかってしまったのはまた別の話――…。