元々、役者を目指していたはずなのにどういう方向転換なのかアイドル目指すなんて…。
どういう風の吹き回しか分からなかったが。
もしかして、アイドルだったら俺だって…璃人に勝てるんじゃないか…。
そんな思いに駆られ、胸が高鳴ったのを覚えている。
璃人に演技で勝てると思えるほど俺だって馬鹿じゃない。
けど、モデルとして経験も積んだし、女の子にもわりと人気もある。それに、歌もダンスもできる方だし…。
一度でいいから、璃人に勝ってみたい。
そんな気持ちを胸に秘め、俺も翌年花ヶ崎学園アイドル科に入学をしたのだ。
しかし…。
現実はそんなに甘くないことを痛感したのは入学して1ヶ月が経った頃。
『すげーよな。桜木と高木、グループ組んだ途端、人気爆発だよ』
『まぁ、元々二人とも人気はあったしな〜。マネージャーも凄腕って噂だぜ』
璃人は既に俺が手が届かないくらいのトップアイドルになっていて…追いつくどころかさらに璃人との差を思い知らされただけだったんだ。
――――…