しばらくタクシーに揺られ、到着したのは某スタジオの前。

僕がサッとタクシーから降りた時。

「心雨くん、今日はここで収録だよ。昨日渡した台本はバッチリ?」

笑顔でそう声をかけてくる八代瑛茉。

「…当たり前。仕事はちゃんとするし」

本日、僕にと彼女がとってきた仕事は声優の仕事、有名アニメのちょい役だ。

モブキャラではあるが、セリフもいくつかあり、なんと主人公との掛け合いもある。

実は、僕自身、このアニメの原作ファン。

そして、主人公の声をつとめているのは、花ヶ崎学園の先輩で、僕の憧れのアイドルでもある桜木璃人(りと)さん。

璃人さんに会えるなんて…そこだけはコイツに感謝だな。

璃人さんレベルになると、あまりに多忙すぎて学校で姿を見かけることは、ほとんどない。

だから、スタジオに足を踏み入れてからも璃人さんに会えることに緊張してしまい、僕はソワソワしてしまう。