チッ、マジでありえない。
僕は心の中で舌打ちをし、平然と隣の席に座る人物を見据える。
現在、時刻は午前9時半。
場所はタクシーの後部座席。
こんな早朝の集合にだって苛ついているってのに、よりにもよって同行者がコイツだなんて…。
昨日付で僕の所属するアイドルグループSAISONの専属マネージャーになったという彼女、八代瑛茉。
花ヶ崎学園マネージャー科3年生で、うちのリーダー景くんと同い年。
景くんが言うには、マネージャー科の首席でわざわざ僕らのグループのマネージャーになりたいと逆指名してきたらしいけれど…
どう考えても違和感バリバリだ。
だって、マネージャー科首席ならどんなアイドルグループでも選びたい放題のはず。
それなのにわざわざ僕らみたいな売出し中の新人アイドルグループを指名してくるなんて何か裏があるに違いない。
景くんみたいなお人好しや、有羽くんみたいな女好きは騙せても僕はそう簡単に騙されないからな。
僕が今日中に絶対、本性を暴いて辞めさせてやる…!
1人そんな決意を胸に秘め、僕は彼女の行動を見張ることにしたのだ。