けれど、リオネルとの結婚式は、やはり勝手が違っていた。

 彼は聞いているほうが恥ずかしくなるような熱い誓いの言葉を述べ、イネスを前に眩しそうに瞳を細め、情熱的でとろけるような口づけをする。
 当然、事前に何も聞かされていないイネスは戸惑った。


(一体、お父様はリオネル様とどんな取引をなさったの⁉)


 おそらく侯爵は、『イザベルの妹』は幸せな結婚をした――――夫にとても愛されていると、周囲に印象づけたいのだろう。
 けれど、それだけのために、ここまでする必要はないだろう。リオネルの胸をドンドンと叩きつつ、イネスは頬を真っ赤に染める。


「リオネル様、一体何を……!」

「ああ、俺の花嫁は最高に可愛いな」


 リオネルの満面の笑みに、イネスの心臓がドキッと跳ねる。それから、しばし逡巡し、抗議の言葉を飲み込んだのだった。