しかし、それから二年後。事態が唐突に動いた。
「――――オシャロア侯爵が代替わりを?」
オシャロア領といえば、誰もが知る国の要所。
南方に位置する海辺の商業都市で、海産物等の名産が多いほか、海外との貿易が盛んで、他国の要素を取り入れた文化・文芸品等も発達しており、観光地としての人気も高い。実際に行ったことはないが、イネスもよく知っている場所だった。
「ああ。新しい侯爵は22歳のリオネル殿。かねてよりお前の結婚相手として目をつけていた男性だが、彼が爵位を継ぐと確定するまでの間、縁談を保留にしていたのだ」
「そうですか……それで今回、爵位を継ぐにあたって私と結婚を」
イザベルから『そんなことも分からないの?』と尋ねられながら育ってきたイネスは、人の思考を先読みすることに長けている。公爵がわざわざ勿体つけた言い方をするのだから、おそらくはリオネルとの結婚が決まったのだろうと察しがついた。
「――――オシャロア侯爵が代替わりを?」
オシャロア領といえば、誰もが知る国の要所。
南方に位置する海辺の商業都市で、海産物等の名産が多いほか、海外との貿易が盛んで、他国の要素を取り入れた文化・文芸品等も発達しており、観光地としての人気も高い。実際に行ったことはないが、イネスもよく知っている場所だった。
「ああ。新しい侯爵は22歳のリオネル殿。かねてよりお前の結婚相手として目をつけていた男性だが、彼が爵位を継ぐと確定するまでの間、縁談を保留にしていたのだ」
「そうですか……それで今回、爵位を継ぐにあたって私と結婚を」
イザベルから『そんなことも分からないの?』と尋ねられながら育ってきたイネスは、人の思考を先読みすることに長けている。公爵がわざわざ勿体つけた言い方をするのだから、おそらくはリオネルとの結婚が決まったのだろうと察しがついた。