「イザベルの恥になるような縁談は結ばせられないわ」


 完璧な女性の家族はまた、完璧でなければならないらしい。
 イネスの結婚相手選びは両親により、とても慎重に行われた。

 結婚をしないという選択肢はなく、平民や低位貴族などもってのほか。名ばかりの没落貴族も却下である。
 そうすると、相手は当然高位貴族ということになるのだが、元々対象者の数が圧倒的に少ない上、容姿や資産、社交界での評判など、両親の厳しい審査が入るため、その殆どが初期段階で弾かれてしまう。


(そもそも、私に結婚なんて無理なんじゃないかしら?)


 プライドの高い公爵家ゆえ、イネスを徹底的にけなしたりはしない。
 けれど、彼女の評判には必ず『イザベルよりは劣るが』という前置きが入る。容姿も、知識も、人柄も、全てイザベルより劣っていて恥ずかしい、と。


 そんな令嬢と結婚をしたいと思う人間がどれほどいるだろう?
 そのくせ、相手を絞りに絞っているのだからたちが悪い。


 どちらにしたってイネス本人に選択権はない。
 両親の言葉を聞き流しつつ、イネスは気ままな生活を送っていた。