呪われてると聞いたカイルは、すぐさま私のもとに駆け寄った。抱きしめようと手が上がったけど、さっきの師匠とのやり取りを思い出したのだろう。しょんぼりとした顔をして私を見ている。


「それに忘却の呪いは、サクラの聖魔力を使って発動させてるから厄介だね〜。きっと彼女はどこかで魔法陣を踏んでいるはずだ。しかも浄化中にね」


(瘴気の浄化中に? なんでそのタイミングで?)


 無意識に首を傾ける私を師匠がクスッと笑うと、その疑問に答えてくれた。


「聖女であるサクラが瘴気を浄化すると、『聖気』がこの国の結界に溶け込む。その状態の時はサクラと結界は『聖気』でつながってるんだよね。だから浄化中に魔術を発動してしまうと、この国を包んでいる結界を利用した呪いが完成しちゃうんだよ!」


(結界を利用した呪い? じゃあ、みんなが私を忘れちゃったのは、結界の中にいたからってこと?)


 その予想は当たっていた。ジャレドは顔を興奮で上気させながら、説明を続けている。


「きっと僕がサクラを覚えているのは、魔術が発動する前に国から出たからだろうね。それに魔術への耐性もあるし! いやあ、でもこれってかなり高度な魔法陣なんだよ。どこかで見た気がするけど、この魔術を作った人は天才だな! 俺の他にこんな天才がいたなんて初めて知ったよ!」