「さ〜て、これからサクラに僕の魔力を流すからね」


 私はコクンとうなずくと、目を瞑る。しばらくすると、つないだ手からじわりとなにかが流れてくるのを感じた。


(なにこれ。温かい……)


 私の体の中に、温かくて心地よい液体のようなものが巡っている。手のひらから腕に、肩から頭とお腹に。スルスルと血管を通っていくように、師匠の魔力が全身に届けられていく。


 どのくらいそうしていただろうか。その優しい温かさが足先まで届いた時、師匠がパッと手を離した。


「サクラ、もういいよ〜」


 そして司教様たちのほうを振り返り、ニコリと笑う。


「彼女に魔力がない理由がわかったよ〜」
「なに! 本当か!」


 二人はずいっと前のめりになって、師匠の話の続きを待っている。するとジャレドは明日の天気を言うような軽さで、検査の結果を笑って報告した。


「うん! 彼女、呪われてるね!」
「な、なに! 呪い!?」


(師匠すごい! アンジェラ王女が私を呪ったって言ってたけど、本当だったんだ……)


 すると師匠は私の喉を指差し、呪いについて説明し始めた。


「まず呪いは二種類だね。一つ目は忘却の呪い。そして二つ目は口封じの呪いだ」
「二つもサクラに呪いがかかっているのか?」