「サイラ、ここは危ないから手をつなごう」
あれからすぐにあの場所を離れ、ケーナという町に向かうことにした。それでも人目を避けて行くため、かなり遠回りするらしい。ということは必然的に舗装していない場所を歩いていくわけで、今の私は心の底からスニーカーを履いていて良かったと思っている。
「ケーナで馬を買うから、そこから教会まではラクになる。少しの辛抱だからな」
カイルに手を引っ張られながら、濡れた苔が生えている岩場を歩いていく。気を抜くと絶対に転けそうなので、私の顔は真剣だ。それなのに、カイルはそんな私の顔を見て、クスクス笑っていた。
(もう、こっちは真面目にやってるのに!)
きっと腰が引けてるから、不格好なのだろう。じっと睨むように見つめると、カイルは気まずそうに口を開いた。
「悪い。いつもの訓練と違う風景に、思わず笑ってしまった」
なるほど。カイルと同じ騎士たちと比べられたら、こんなへっぴり腰は生まれたての子鹿がついてきているようなもの。