「サクラ! 大丈夫か!」
(えっ? この声はカイル……?)
私の元に駆け寄ってきているのは、たしかにカイルだった。彼が助けに来てくれた? なぜ? どうやってここに来たの? いくつもの質問が頭を駆け巡り、私は返事をすることも忘れ、ただただ彼の姿を見つめていた。
「カ、カイル。私のこと、覚えてるの?」
「なんのことだ? サクラを忘れるわけないだろう?」
(忘れてない? じゃあ忘却の呪いは失敗したってこと? でも一度目のことまでは思い出してないみたい……)
何が何だか分からないという思いで呆然としていると、カイルが素早く木とつながっている縄を切ってくれた。そして忌々しいものを見るような目で魔法陣を破り捨て、今度は私の手首の縄を切り始める。
「どうやって、ここがわかったの?」
「王女が使った転移の魔法陣を復元したんだ。しかしそれでかなりの魔力を使ったからジャレドはここには来れなかった。それに俺もかなりの魔力を――」
そう言ってカイルが縄を切り、ほどいてくれている時だった。一瞬、彼の足の隙間に誰かの手が見えた。その青い魔力を帯びた手には魔法陣が描かれた紙があり、私はすぐさまカイルに向かって叫んだ。