(えっ? ケリーさんが私を裏切った? 師匠は突然なにを言ってるの?)


 驚いて振り返ると、ジャレドはすでに臨戦態勢に入っていた。高くかかげる手には魔力がこめられており、今にも攻撃しようとパチパチと火花が飛んでいる。初めて見るジャレドの本気の魔力に、私は声を出すことすらできない。


「ジャレド氏! いったいどうしたんだ!」
「は? え? お、俺が裏切った? ジャレドさんはなにを言って……」

「おまえ、王女に情報を流しているだろう」
「なに!?」


(ケリーさんがアンジェラ王女に、私たちの情報を流している?)


 その言葉にみんな唖然とした表情で師匠とケリーさんを見ている。ケリーさんはなにを言われているのかわからないようで「え? 王女に俺が?」と言ってオロオロし始めた。その間も師匠はケリーさんに向けた手を下げることはない。それどころかさっきよりも魔力の量が多くなっている。