「サクラ、こっちの裏通りから宿に向かおう」
「うん、わかった!」
アンジェラ王女の婚約に沸き立つ人だかりを避け、私たちは建物の裏手にある細い路地に出た。みんな表通りで騒いでいるようで、人はまばらにしかいない。
「サクラを囲むように移動しよう」
「「はい」」
「わかった〜」
ブルーノさんやアメリさんはもちろん、師匠までもが周囲を警戒している。やはりみんな王女の婚約に思うところがあるようだ。そのままブルーノさんおすすめの宿屋に行くと、すぐに一番大きな部屋にみんなで集まった。
「念のため、防音の魔術をしとこうか」
師匠が腕を大きく広げるとキンと音が鳴り、部屋に薄い膜のようなものができる。顔を見合わせ話すのを我慢していた私たちは、防音が始まったと同時にいっせいに話し始めた。