(カイルだ! ようやく会えた!)


「グッ……ゲホッゲホッ」


 カイルの名を呼ぼうとすると、また喉に強烈な痛みが走り、言葉が出てこない。でもカイルと会えた。それならすぐにこの拘束も取ってもらえるはず!


 それなのに、目の前のカイルはさらに険しい顔をして、私を睨みつける。


「おまえは何者だ! どこから入ってきた! 答えろ!」

(……どうして? カイルは私のこと、わからないの?)


 こんなにはっきりと目が合っているのに、カイルは私の名前を呼んでくれない。それどころかますます怪しいと判断し、私の首筋に剣を当ててきた。ヒヤリとした刃の感触に、現実に起こっていることだと、嫌でも思い知らされる。


(顔が似てる別人なの? だってカイルなら私のこと、忘れるはずがないもの)


 でも彼には兄弟はいなかったはずだ。だってプロポーズしてくれたあの日「俺は一人息子だから、サクラと結婚したら娘ができたと言って、両親が大喜びするぞ」って言ってたからよく覚えてる。