花の香りをのせた優しい風が、青みがかった髪をさらさらとなびかせている。少しつり上がった藍色の瞳がふにゃりと柔らかくなるのは、私だけが見ることができるカイルの笑顔だ。
「ずっと君を守ると誓わせてくれ。それにもう誓ってしまったからな。取り消しはできないぞ」
(か、かわいい〜! 好きすぎる……!)
今私がいるのは教会の客室だ。夕ご飯も食べ終わり一人でゆっくりと夜を過ごし、あとは寝るだけという時間。それなのに思い出すのは昼間のカイルのことばかりで、ゴロゴロと左右に寝返りを打っては、またあの時の彼を思い出していた。
(私に恋してるて言ってくれた……! そのうえひざまずいて一生守るって……!)
「くうううう〜!」
(う、嬉しいいい! この世界に来てつらいことばかりだったから本当に幸せ!)
ベッドの上であの誓いを思い出しては、両脚を交互にバタつかせクッションに顔をうずめている。なんとか叫び出したい衝動を抑えると、私は耳まで熱くなった自分の頬に手を当てた。
「はあ……もう寝なくちゃ」
枕からはブルーノさんが作ってくれたポプリの良い香りがほのかに漂っている。