「おや? アンジェラ王女はこの検査板に、そのような不正ができる方法をご存じで?」
「わ、わたくしが知るわけないでしょう?」


 やはり彼女は子供だ。突然質問を返され目が泳ぎ始めた。するとその姿をかばうようにエリックが前に出てくる。王女と違ってまったく動揺はしておらず、堂々と師匠のほうに歩いていく。


「きっとその検査板には、人がふれると虹の光が出るよう細工してあったのでしょう。ジャレド氏があらかじめ魔法陣を仕込んでいたのなら簡単ですよね?」


 そう言ってエリックはせせら笑うと、王女のほうを振り返った。アンジェラ王女はホッとした顔で「エリックの言うとおりよ!」と叫んでいる。


(たしかに私たちが奥に隠れてから時間はあったから、検査板になにかすることはできたと思う。じゃあ、これはその場しのぎの策なのかな……)


 二人のやり取りに心臓がバクバクといっている。しかし師匠は挑戦的に睨みつけるエリックを見て、ニヤリと笑った。待ってましたと言わんばかりの表情に、目の前のエリックは気づかない。


「なら君がこの検査板にふれてみればいい。君の魔力の色は?」
「……青だが」
「さあ、どうぞ」


 検査板を差し出され、エリックは戸惑いながらも手を置いた。するとすぐに板は青く光を放ち、ジャレドは満足そうにほほ笑んだ。