「彼女は教会が召喚した聖女です。処刑なんてもってのほか。陛下にもそうお伝えください!」
きっぱりとカイルが王女に向かってそう言うと、彼女はダンと靴を鳴らして立ち上がり、私を指差した。
「カイル! 目を覚ましなさい! この女は王宮に侵入した犯罪者よ! 聖女はわたくしです。この女じゃないわ!」
顔を真っ赤にし、ふうふうと息を荒げ叫ぶ姿は、とても王女とは思えない振る舞いだ。まるで子供が駄々をこねているようなその言動に、カイルは大きなため息を吐き、冷たい視線を送っている。
(でも私が聖女だと証明できないよね。王女がカイルの言葉で引き下がるとも思えないし、どうしたらいいの?)
するとこの騒動の火付け役だった師匠のジャレドが、まるで舞台役者のように一礼をし、私と王女の前に割って入ってきた。
「これはこれは王女様、説明不足で申し訳ございません。こちらの聖女が王宮に突然現れたことは、聞いております。聖教会の手違いで召喚地点がずれてしまい、王宮に聖女サクラを転移させてしまったようなのです」
あくまで私が王宮に出現したのは、教会の召喚のせいだと押し切るようだ。それでも王女はその言葉を信じるわけもなく、フンと鼻で笑った。
「なにを言っているのかしら? この女は聖女でもなんでもない、ただの犯罪者よ! だって聖魔力どころか、魔力もないのよ?」
(やっぱりそうなるよね……)
何回も調べたけど、私には魔力の反応がなかった。それに師匠いわく呪われているから、魔力がないのだという。それなら呪いが解けていない私には、聖女だと証明することができないはず……。