「大丈夫だよ〜。もしかしたらサクラが教会に匿われていることに気づいてるかもしれないだろう? その時に王女がどんな強引なことをしてくるか、わからないからね。僕は奥に続く扉の近くで立ってるだけ〜」


 ニコリと私たちに向かってほほ笑むと、師匠は「ほら行った行った」と私とカイルを奥の部屋に押し込んだ。パタンと扉が閉まる瞬間「君たちこそ二人っきりだからって、変なことしちゃダメだよ〜」と聞こえてきた。


 師匠はいつもどおりを装っているのだろうけど、それを聞いたカイルは顔を真っ赤にしている。本当にこういった軽口が苦手なのだろう。


「俺は、そんなことはしないからな。安心してくれ」


 ドンと胸を叩いてそう言うと、私を守るように扉の前に立った。私も扉に耳を当て、これから行われる会話を聞こうと準備をする。


 そうしてしばらくたった頃、さっきまで私たちが居た応接室に誰かが入ってきた。


「まあ! 貧相な部屋ですこと。こんなところに王族であるわたくしを案内するなんて、ひどい扱いですわね」


(第一声がこれか……)


 あまり親しくなかったのでろくに話したことはなかったけど、予想以上にワガママに育てられているみたいだ。礼儀作法に厳しいカイルは怒っているのか、肩が震えている。