「ああ! そうだった! 瘴気は聖魔力を持った騎士さんにしか、見えないんだった……」
ガックリと肩を落とし、私がさっきした事が、何も伝わっていなかった事実に落ち込む。これじゃ、ただの変なパントマイムを見せつけた女だわ……!
それに一日で浄化する瘴気の量だってギリギリだったから、もう授業の続きができない。
(あの授業、好きじゃないから、今日中に終わらせたかったのに……!)
そんなしょんぼりと座り込む私の耳に、男のボソボソとした声が聞こえてきた。
「……ないか」
「え? なにか言いました?」
すると目の前の騎士が急にこちらに向かって走り出し、私をすごい勢いで抱き上げた。
「凄いじゃないか! あなたは本物の聖女だ!」
「え? 今? その前にさっき私が何をしたか、見えていたんですか?」
高い高いをされている状態の私がそう言うと、騎士は満面の笑みでうなずいた。
「ああ! 俺はこの国唯一の聖騎士だから、ちゃんと見えた! 君が瘴気を体に取り込んで、聖魔力で浄化して空に飛ばしたんだ。あんなに美しい光景は初めてだ!」
「……それは、どうも。それより、そろそろ降ろしてもらえると嬉しいのですが」
「ああ、すまない」
騎士は私をそっと降ろすと、素早くひざまずき、さっきの態度を謝罪し始めた。