出発の前に、美穂さんにその事を告げると、美穂さんはたいそう喜んで、二人の為に弁当を作りたいと言い出した。


「三十分あれば出来るから、少しだけ時間をちょうだい!お願い、伊東君!」



「もちろんです。きっと美咲ちゃんも喜んでくれると思いますよ♪」



外に出掛けるなんて、たいした事無いと思うかもしれないけど、不登校の女の子からすればこれは大きな進歩なんだ。美穂さんがあんなに喜んでいるのがその何よりの証拠だ。


そして、僕は水彩画を描く事を口実に美咲ちゃんを色々な場所へと連れ出す様になった。


元々、美咲ちゃんには水彩画の素質があったに違いない。そのうえに彼女自身が絵を描く事が好きだった事もあって、彼女の水彩画の技術は僅か一ヶ月の間にメキメキと上達していった。



水彩画の上達と共に、美咲ちゃんは段々と明るくなりよく笑う様にもなった。


最近では、水彩画の時間の後に僕とスイーツの店に行ったりも出来る様になり、このままなら不登校も克服出来る様になるのでは?と、僕は思った。



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