現世で高校の頃から水彩画を描いていた僕は、現世と佇まいが殆んど一緒である異世界のこの近辺のスケッチポイントはほぼ把握していた。



それを、距離の近いものから順に並び替えノートに写す。



「え〜と、ここと、ここは今週行って………来週はここと、ここ………」



最初は近所のポイント。そして段々と距離を伸ばして、美咲ちゃんとの信頼関係も築かなければならない。



これは、只のバイトでは無いんだ。一人の女の子の将来が懸かっているのだと、いつしか僕はそう考える様になっていた。


そして、翌日から僕の『水彩画個人授業』が始まった。



「今日はこの場所に行こう。ここは比較的初心者でも描き易いと思うんだよね」



「え〜っ!ホントですか〜?」


「ホント、ホント!まずは基本を押さえるのにこういう場所はうってつけなんだよ」



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