僕は美咲ちゃんにある提案をしてみた。



「ねえ、美咲ちゃん。良かったら『水彩画』描いてみない?」



「水彩画?」


水彩画なら、僕は高校の頃から描いているし、これなら美咲ちゃんに教えられる位の技術もあるつもりだ。


「水彩画ってのはね………ちょうど僕の部屋に描いたものがあるから、ちょっと持って来るね」


僕は一度部屋に戻ると、水彩画を数枚持って再び美咲ちゃんの部屋を訪れた。


「はい、これが水彩画」



僕が渡した水彩画に、美咲ちゃんは思ったより食い付いてくれた。



「これ………先生が描いたの?」


「そうだよ。まぁ、プロの絵描きに比べたらずいぶんと劣るけれども………」


「そんな事ないよ。凄く上手く描けてると思う!まるで、写真みたい!」



「ありがとう。けれど、それがプロとアマチュアの差とも言えるんだ。ただ写真のように描くのであれば、写真を撮るのと変わらない。精巧に描きながらも、作者の主張や特徴を作品に持たせることが、絵を描く事の意味になるんだ」



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