「...王子だか知らないが、そいつと妹とのこと。学校のこと、家族のこと」
「...うん」
「俺はお前の一部分しか知らないだろうが、色々あることだけはわかる」
「...わかるの?一体何がわかるの、」
また喉が締まり、ひゅっと脳が攻撃の姿勢に入る。
だめだ、だめだ、深呼吸。
私が呼吸を整えて、落ち着くのを待ってから言葉を続ける。
「もちろん俺はお前を理解することはできない。誰にもできない」
「.........」
「でもお前はいつも辛そうだ」
イヴァンがじっと私を見つめる。
薄暗い中でも、新緑の瞳の奥の奥まで、見た。
「......私が、辛そう?」
「そうだ、いつもいつも。楽しそうにしている裏で、ずっと沈んで抜け出せない」
彼の目をこんなに真正面から見たのさえ初めて。
「...話したら楽になるとか、考えたことなかったか」
「っ、...」
イヴァンの冷たい手が、涙でふやけた熱い指を冷ましてくれる。