アンナが二人居て良いわけがない。
───私がバラバラになったら、今度こそ悪い人間になってしまう。
ギリギリの理性でしか保てないほどの、愚かで悪い人間なのだ、私は。
考えろ、考えろ、悪いところだけ見つめるな、アンナ。
思い出すんだ。
可愛いアリーナ、似合う物を見極める真剣なアリーナ、努力を惜しまない私の大事な大事な妹。
あれ程の事があっても私を敵視してなかった、しないでいてくれた。
周りに流されない立派な子に育った。
「は、...は、うぅ......」
思っても、涙は頬をつたうばかり。
どこまでも酷い性格だ、私は。
「っ、!!!」
嗚咽が収まって、涙を拭こうと手を───突然何かが肩に触れて、思わずビクッと飛び退いた。
「心臓止まったら、っ、どうして、くれんの...!」
涙は一瞬で引き、イヴァンだとわかるとまたどろどろと視界がぼやける。