背中を叩き、扉の方へ追いやる。
「お前は優しくないな」
「ええ、お褒めの言葉をありがとう。そう決めたんだもの、自己中に生きるって」
ぐうぅぅぅ...───
必死のお喋りを邪魔してきたのは、紛れもないアンナ・ジェラシヴリの胃腸でした。
────沈黙する私にイヴァンは翡翠色の瞳を細めて、...僅かに歯を覗かせ、ははは、と楽しげに笑った。
そして言った。
「夕飯、できてる」
「え?」
「作ったから。とりあえず食べるか?」
いつかの初めての野宿を思い出すご飯。
...いや納屋に泊めてくれたから、野宿と呼ぶのはやめておこう。
ブロッコリーのスープ、パン。
違うのは、温かくて、心がほっとして、泣きたくなって、
時間が止まってほしいと思う私の身体があるだけ。
「魔法でご飯、作れるの?」
「作れるが、俺は余計な体力は使わないんだ」
「そうなの?意外。普通に作ったほうが楽なんだ」
「魔法でも結局味は実際の腕次第だしな」
時々、こうして教えてくれる時がある。
好きなんだなぁって、顔を見ればわかる。
なぜかまた泣きたくなって、咄嗟に上を向き瞬きで誤魔化す。
今日は情緒が不安定な日なんだ、それだけだ。