貴族の娘として生まれたお母さんも、私と同じだったはずだ。

でも母が悪いわけでもない。

身分が高く生まれても低く生まれても、同じ人間なのに。


こんなにも差ができてしまっている───。


なぜ泣いているのかわからない。

悲しいし、悔しいし、でもそれだけじゃない。


あぁもう、なんでこんなに悶々とするんだろう、私って。

苦しくなるだけなのになあって、少し違うことを考えてみて、結局疲れてぼーっとして。


「───今日はもう、終わりにするか?アンナ」

「...!...い、いいえっ」


戸口にイヴァンが立っていた。

慌てて涙を拭こうとしたら、もう頬の上で乾いていた。


「そうか?ダメそうだけど」

「理由も予告もなく閉めちゃ、もし人来たら可哀相でしょ」

「俺はもう疲れたからいいや」


逆光で表情はよく見えない。

ごまかすつもりはないけれど早口で捲し立てるように口が勝手に動く。

「だめだめ!そんなの。困ってる人を助けるんじゃないの」

「......いいのか?」

「っ、...そうやってサボろうとしない!甘えって言うの!!」