「なんだ、嬉しいんじゃないのかアンナ」

「いや、あの、そういうことじゃなくて...」

「じゃあ何だ。言ってみろ」


「いや、まず、な、なんで......なの...?」


ほう...と口元に手を当てた彼が心の根っこの部分はちゃんと優しいことには、最近、気づいた。

冷たいけれど、話しかけたら決して無視はしないし、食事も残さずきれいに食べてくれる。


優しい心も持っている。

魔法で薬を作れる、口数の少ないミステリアスな、普通の人だ。


でも好きでは......ないと思う。


そもそも、好き、がどういうことなのかもわからない。

というかそんなの考えてる時点で男好きなのか...?私は。

勉強も、好きというより、わくわくするし、知らないと気が済まないからやっている、という方が大きい。

わくわくと好き、は違うものだと、私は思う。



「───この村の人間を助けたいから、かな」



「え、は…?」

「なんだ」


「ひ、ひ、人を、助けたいぃー…?!!」