近づく彼女に対し初めて、妹を初めて、怖いと思った。
彼女は周りを見ない。
興味がないために、ただ明確な単純な、肩書きや位で判断する。
その要素が彼女にとっての唯一の人に対して持つ情報だった。
美しく手入れされた顔は似ている。
髪色も、鼻も、目元も、──双子と間違われるくらいに──そっくり、だった。
しかしこれほどまでに違う姉妹。
「お姉さま、学生生活が伸びると、ヴェリス様にお知らせするのがよろしくて?」
......え?
言い残し、しずしずと美しい佇まいで広間を出ていく彼女が、わからなかった。
ヴェリスは、アリーナの婚約者の名だ。
どうしてそんなことを言ったの?
嫌がらせ?見せしめ?
見せしめに使う時間など、あの子が作るはずはないことだけは、確かだった。
そんな暇、己を磨くために費やすであろう。
どうして──────
そこから数日間、自分を離れて見ているかのような感覚の中で過ごした。
そんな記憶が、夢が、蘇った。