真っ白だった頭は、なんで、なんで、という言葉で埋め尽くされてゆく。
なんで、なんで、なんで。
なんで、どうして。
どうして破棄、何その噂、なんで今、こんな冷たい空気は、ここは...どこ......
どこ、なんで、なんで──
落ち着いて徐々に理性を取り戻すと、次は別のなんで、だった。
なんで目の前にいる人より、出所の知れない噂を信じるの?
恋なんか興味ないって、知ってるのに。
「王太子様と国のために、頑張ってるんだね」「すごいね」って分かってくれたのに。
どうして、人をたぶらかしたって噂を信じられるの?
あの言葉は嘘だったの...?
どうして、なんで、どうして。
だめよ、泣いちゃだめ。
何も悪いことはしていないんだから。
理不尽に負けてはいけない。
意地でも顔を上げたままの私に、アリーナがゆっくりと歩いてくる。