翌日になり、その日は私も学校を休んだ。まだ最期かなんて分からない。
だって余命があってもそれ以上生き長らえる人だっている、奇跡的に命が助かることだってある。

でも怖かった。そんな奇跡を信じていられるほど私はこの世界を甘くは見ていない。

苦い珈琲のようなこの世界、お母さんを奪ったこの世界、そして私の愛する人を奪うかもしれないこの世界。

__でも、私を愛する人と出会わせてくれたこの世界。

「ねぇ、冷。僕ね行きたいところがあるんだ」

私が考え事をしているとふと暖がそう言ってくれた。
でも今は安静にしていないといけないはずだ。外にでるのはきっと駄目だ。

でも、暖の苦しそうに笑う表情を見ると私は「うん、行こう」と言った。

だって笑顔な暖が見たいから。
いつも暖かく優しくはにかんでくれる君の顔が見たいから。

私達はこっそり病室を抜け出してある場所に向かった。
それは暖と一番最初、いや、二回目に出会った場所だった。桜の木の下だ。

あの日も確かこれくらいの時期で桜が綺麗に咲き誇る中、私は泣いていた。
暖が話しかけてくれたことを思い出す。

「__大丈夫?」

ふふっと笑みがこぼれてしまう。あの時はまさか二度目の再開だなんて思ってもみなかったのに。

「冷、やっと笑ったね。」

してやったりと言うように笑みを浮かべてそういう暖に驚いてしまう。こんな時まで彼は優しいのか。
でも、暖の笑った顔が見れて私も嬉しくなった。

「…暖もね!」

唇を噛み締めてるのがバレないように笑顔を見せた。

嘘でも作った笑顔でもない。本当に心の底から湧き出た暖に向けた笑顔だった。それなのにやっぱり辛さは消えないものだなと自分に呆れてしまう。