*Rei

放課後になると私と暖、そして桐生くんの三人で話すことが増えた。

もちろん小説も表現を考えたり話し合ったり、ただの雑談をしたりもしていた。徐々に私と桐生くんも前よりかは仲が深まったと思う。

「じゃ、俺はそろそろ帰るわ」

桐生くんがそう言って帰るのは当たり前のようになっていた。それはきっと私達を気遣ってのことだと思う。

二人の時間も欲しいだろうという、なんだかそう思われていると考えると少し気恥ずかしい。けれどその気遣いが少しありがたくもあった。

「最近学校はどう?」

「楽しいよ、チカとも今まで通り話せてるし前までのことがほんと嘘みたいだよ」

「ふふっ…それならよかった」
ニコニコと優しい微笑みを浮かべて私と会話をしてくれる暖とのこの時間が好きだ。

他愛もない話なのになんでこんなにも楽しいんだろうか。チカとも、桐生くんとも、お父さんとも違う。

皆と話をしていてももちろん楽しいし違う幸せがある。
でも暖だけはどうしても格別で、同時に切なさと愛おしさがいつも込み上げてくるんだ。

なんでずっと続いてくれないんだろうって、そう思ってしまうから。

そんなことを思っていると暖が口を開く。

「_____冷が好き、大好きだよ。ずっと一緒にいたい」

電話をした時に直接言わせてと言ってくれた暖。
覚えていてくれたんだ。

"ずっと一緒にいたい"

叶わないはずの言葉なのにまるで永遠の愛を誓うかのような言葉が今の私には泣きそうなほど心が締め付けられた。

「私もだよ。暖、ずっとずっと一緒にいたい。大好き…っ……」

もうこんなに時間が経ってしまっていたのか。
今日は、余命一年と言われていた暖の最期かもしれない前日の日だった。

分かっていた。考えたくなくていつものように振舞っていたけれど無理だった。

だって、だって暖が明日にいなくなってしまうかもしれない。苦しい。嫌だ。

でも…今はただ泣き続けるんじゃなくて暖と幸せな時間を少しでも長く過ごしていたいんだ。