「あった」

「......なんで、こんなとこに......」



裕木くんがなくしたという春休みの宿題。

それは、なぜか屋上にポツンと落ちていたのだ。
そしてまさに、風にあおられて落ちていく寸前だったのだ。

......なんで、こんなとこに?

屋上て、春休みの宿題あってもおかしくない場所だっけか?

......いや、それはない。ありえない。

おかしい、まず最初からおかしい。

なぜこんな場所に春休みの宿題を落とす。



「裕木くん、戻ろ」

「......、」

「集会始まっちゃうよ」

「......」



無言が返ってくるばかりで、私は顔を覗き込む。



「? ......裕木くん?」

「巴南はさ、」

「私?」

「......何でも。戻ろ、」



何も言わずにくるりとUターンした裕木くんの後を追って、私は屋上を抜けた。



「始業式、始まっちゃうかなあ」

「ん、かも」

「じゃ、急いでいかないとだね......」

「......俺、は、別に、」



裕木くんは、どこか視線を逸らす。

そして、また視線を上げて私を見つめた。

目がぱちりとかみ合う。



「このままでもいい」