「はじめまして。隣の席でしょ? 一年間よろしくね」
「...は、はぁ」
高校二年生、初日。
始業式と、自己紹介と、それだけで終わる一日目。
初日から一ヵ月は、名前順の席で、過ごすことになるのだけど......。
その隣の席が、TOP2の1——掛嶋 涙だとは聞いてない。
フレンドリーではなく、高嶺の花、と言われていたはず。
そんな人が、どうして私に......。
「巴南ぁ」
「裕木くん」
裕木くんが声をかけてきて、思わず立ち上がる。
相変わらずきれいな瞳は、眠たそうに細められている。
かわいい......って、そうじゃなくて。
「どうしたの?」
「春休みの宿題、なくした」
「え?」
「なくした」
「えええええええええっ、ちょっ、それはやばいんじゃ......」
「うん」
「あー、もう、一緒に探すよ」
裕木くんにそう言って、教室から出る。
ドアのところで振り返るけれど、裕木くんはまだ私の席のところにいるまんま。
なんか、掛嶋くんと不穏な雰囲気......。
裕木くんは少しした後、あっさりと私のところに来た。