「......ここ、奪っちゃっていい?」
————ガタッ
そんな音が聞こえて、音がしたほうを見る。
「......裕木、くん、」
「巴南......?」
裕木くんの瞳が私をとらえる。
裕木くんの視線は、私のすぐそばにも動いていって。
「掛嶋?」
「裕木クン、久しぶり」
「......巴南に何した」
「ん、別に何も? ちょっと口説いてただけ。
———巴南が、俺のこと見てくんないかなー、って」
「......」
「裕木クン、俺、巴南のこともらっていいよね」
ここでいきなりの爆弾発言。
私は動揺して、声を上げる。
「な、何言って、」
「巴南はちょっと静かにしてて。......いいよねー、裕木クン?」
そのあと、また、唇を人差し指の腹で触られる。
裕木くんの反応が気になってしまう。
掛嶋くん、......裕木くんに、勘違いされちゃう。